数年前に「mottainai」という日本語が注目され、さらにSDGsなどの考え方が普及することで、衣料品の大量生産大量廃棄に厳しい視線が注がれ、同時にリメーク・リフォームに対する関心が高まりました。この市場は、利用者が持ち込んだものを加工するというビジネスモデルなので、差別化の仕方が結構難しい。そんな中で、ユニークなコンセプトを打ち立ててサービスの差別化を進める企業がありました。
■目次
引用記事
フレックス、衣料品再生で都内に新拠点 リメーク受け付け、工房も併設
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO80220590X10C22A2H63A00/
記事要約
・シャツ製造のフレックスジャパン(長野県千曲市)は、衣料品のリメークを手掛ける再生拠点「ひなた工房 築地」を東京都内で立ち上げる。注文の受け付けから縫製までを一貫して対応する。顧客ニーズにも柔軟に応じながら、リメークできる商品を拡充していく。今秋には福島県でリメークの専用工房の開設が控えており、再生事業の拡大に向けて弾みをつける狙いだ。
・再生事業は2021年春に着手した新規事業。子供の洋服や親から引き継いだ和服などをリメークして、顧客の「思い出の再生」とすることをコンセプトにしている。現在は同社の長野県内の直営店とホームページを通じて注文を受け付けており、縫製作業は千曲市の本社工場で担う。昨春から現在までで、100件以上の注文があったという。
・再生事業ではリメーク以外のサービスも拡充している。1月には子供が描いたイラストなどを、弁当包みなどに使えるマルチクロスに刺しゅうする注文も受け付け始めた。たんすや押し入れなどにしまわれがちな子供の絵などを日用品に再生することで、思い出を風化させない狙いだ。
ポイント解説:リメークの価値は何か?
・サステナビリティーや循環型経済という用語、価値観の普及により、リメーク需要が伸びるのは自然なこと。しかしリメークの目的や価値やニーズは、「今のまま引き続き使いたい(修理)」「もっとおしゃれに作り替えたい」「別のものに作り替えてもいいから、何らかの形で持ち続けたい」などさまざま。
・今回の事例で興味深いのは、コンセプトを「思い出の再生」としたこと。これは機能性ではなく「物への思い入れ」にフォーカスしたコンセプトだと言える。そこから生み出されるサービスとして、子供が描いたイラストをリメークに使用するなど、リメーク事業の幅の広がりに繋がっている。
・「捨てたくない」という気持ちにフォーカスしたコンセプトと、それを実現するためのサービスラインナップという形が、綺麗に繋がっている。今後どんなユニークなリメークが行われるのか、期待したい。
関連リンク
・フレックスジャパン https://www.flexjapan.co.jp
・Re:stitch https://www.restitch.jp
自社のマーケティングに活かすには?
・自社の商品やサービスを利用するお客様の本当のニーズはなんですか?たとえば今回の事例なら、なぜリメークしたいのか。「場所を取るからといって、思い出の品を捨てたくない」というのが顧客のニーズ。
・その顧客のニーズを実現する行為を、コンセプトとして言語化してみてください。今回の事例なら、「思い出の再生」がそれに当たります。
・そのコンセプトを実現するためには、どんなサービスが考えられますか?今回の事例であれば、実はリメイクの素材は服だけではなく「思い出の品」全般になります。だからこそ、子供の描いたイラストなどもリメークの素材に入ってくるのです。