ファシリテーターに求められる、議論の質を高める6つのスキルとは?

会議の司会をしたことがある人は、 会議中に発言が出なかったり、 参加者同士の意見が対立して空気が悪くなったり、的を得ない発言ばかりが続いて時間が過ぎてしまったりと、運営の難しさを感じたことがあると思います。 議論の質を高める上で、ファシリテーターとして求められる技術として、 以下のようなものが挙げられます。

  1. 参加者から発言を引き出す
  2. 参加者の発言を受け止める
  3. 参加者に適切な質問を行う
  4. 参加者の発言を整理する
  5. 横道にそれた発言に対処する
  6. 参加者同士の対立の調整を行う

ここではこの6つのスキルについて説明します。

1. 参加者から発言を引き出す

議論を進めたり、参加者同士の一体感を生み出していくためには、参加者からの発言が出なければなりません。 そのためにファシリテーターは、参加者から発言を引き出すためのスキルやテクニックを身に付ける必要があります。ファシリテーターや会議自体に反感や敵意を持っていない限り、参加者は何らかのきっかけがあれば発言をしてくれます。 ファシリテーターはそのきっかけを提供することが必要です。 例えば以下のような方法があります。

興味を持ちやすい話題を振る

いきなり議論の本題に入るのではなく、これから議論しようとしている内容に近くて、かつ参加者の誰もが興味を持っていたり、知っていることについて投げかけてみましょう。参加者は自然と発言をしやすい雰囲気になります。

状況を具体的に設定する

質問の内容がぼんやりしていると、参加者もどう発言をすれば良いか分かりにくくなってしまいます。ファシリテーターが状況をより具体的に設定して、「このような状況の場合にどう考えますか(どう思いますか)」といった感じで参加者に質問を投げかけてみます。そうすると参加者もより発言しやすくなります。

2.参加者の発言を受け止める

参加者がせっかく勇気を出して発言をしたのに、ファシリテーターがその発言をないがしろにすると、参加者の意欲が削がれ、議論が停滞してしまう恐れがあります。ファシリテーターには、参加者からの発言をしっかり受け止めることが求められます。 そのための心構えとして

  • 発言をしっかり聞く
  • 発言に集中する
  • 発言を理解したことを示す

ことが大切です。

発言をしっかり聞く

大前提として、参加者の発言をしっかり聞く態度が大切です。何かしながら聞いていたり、相手の目を見なかったりすると、参加者は自分の発言をしっかり聞き受けてもらえていないような感じを受けてしまいます。

発言を聞くときには、意見そのものと、その意見を述べるに至った背景を理解することが大切です。 また、発言者の 意見に、知らず知らずのうちにファシリテーター自身の判断や意見を加えてしまう 場合があります。これも参加者にとっては、自分の意見をないがしろにされたような印象を受けてしまうので、注意が必要です。

発言に集中する

人間は人の話を聞いているときの方が、自分が話している時よりもずっと早く物事を考えることができるため、人の話を聞いているうちに、他のことを考えてしまいがちです。 ファシリテーターは意識的に発言者のメッセージに集中する心がけが必要です。

また発言そのものだけではなく、 どのような意図でその発言をしているのかについても考えてみると良いでしょう。言葉通り、字面通りの意見と受け取って良いのか、発言している人が置かれている状況や立場、その人の個性なども考慮した上で、その人の 発言を理解できるように心がけましょう。

発言を理解したことを示す

参加者が自分の発言をファシリテーターに理解してもらえたと感じるためには、ファシリテーターはただその人の話を聞いているだけでは不十分です。自分の言いたいことがファシリテーターにしっかり理解 されたと言う実感がわくと、参加者も発言により前向きになります。 ではどのようにファシリテーターは、自分が参加者の発言を理解していると示せば良いのでしょうか。

1つの方法として、単に参加者の発言を聞くだけではなく、その人の発言をファシリテーターが復唱すると言う方法があります。 発言者は自分の発言がファシリテーターに理解されたと理解 できますし、発言者以外の参加者も発言の 内容への理解が高まります。復唱するときにはこの3点を気をつけると良いでしょう。

  • 語尾を繰り返す
  • キーワードを復唱する
  • 話の内容を自分の言葉で言い直す

またこれは少し難易度の高い方法ですが、「ペーシング」と言う手法があります。これは相手の言葉遣いや口調、動作などのコミニュケーションを真似することです。 人間は自分と近い声のトーンや、しぐさ、表情をしている人に対して親近感や安心感を感じる傾向があります。ですのでファシリテーターは意図的にこのペーシングを使って、発言者との心理的な距離感を詰めることができます。

3. 参加者に適切な質問を行う

ファシリテーターが会議を運営するにあたって、最も活用する手法がこの質問です。質問は参加者の発言を引き出すだけでなく、出た意見の全体像を明確にしたり、その意見に対する賛成や反対を確認することもできます。 質問には大きく分けて「オープン・クエスチョン」と「クローズド・クエスチョン」があります。

オープン・クエスチョンとは、「どう思いますか?」のように、答えを限定しない質問の方法です。これは、アイディアを数多く挙げてもらいたい時や、参加者に自由に考えさせたい時、あるいは参加者の参加意識を高めたい時などに有効です。

クローズド・クエスチョンは、「賛成ですか?反対ですか?」のように、答え方を限定する質問の方法です。こちらは、出てきたアイディアを評価したり、参加者の合意を得る時などに有効です。

この2つの質問方法をうまく使いこなすことで、議論を拡散させたり収束させたり、 参加者の 視点を広げたり狭めたりすることができます。

4. 参加者の発言を整理する

議論が盛り上がり、様々な意見が出てくる事は好ましいですが、一方で発言を適切に整理したり、さらに議論を深めやすい状態にするためには、発言の整理が必要です。 発言の整理の仕方には大きく分けて3つの方法があります。

似たような内容の意見をまとめる

似たような意見をまとめることで、発言がどこに偏っているのかを整理することができます。ファシリテーターは、バランスよく発言や意見が出ているかに注意を払う必要があります。

意見と意見を関連付ける

出てきた意見と意見を関連付けることで、それぞれの意見がどのように関連しているのかを把握することができます。関連付ける視点としては以下のようなものがあります。

  • 目的と手段
  • 原因と結果
  • 時系列での推移
  • 主張と根拠

また意見と意見の関連だけではなく、それぞれの意見が議論の目的に対してどのように関連しているかを整理することも、ファシリテーターの大切な役目です。 意見同士の関連性などは、口頭で説明するだけではイメージがつきにくい場合があるので、ホワイトボードや図解などで整理をしていくと良いでしょう。

整理した意見のレベルを揃える

様々な意見が出てきたときに、それぞれの意見のレベルが違う場合があります。例えば「 戦略・作戦・戦術」「 経営戦略・事業戦略・営業戦略」 のように、同じ会議の中で違う階層に属する意見が出てくる事はしばしばあります。これらをレベルを開けて整理をすることで、議論がわかりやすくなります。

5. 横道にそれた発言に対処する

議論を進めるうちに、議論の本題とはあまり関係ない意見が出てくる場合があります。そうした発言に対してどう対処するかで、議論の進み方が大きく変わる場合があります。 対処の仕方には大きく2つの方法があります。

意見が的外れの場合

本来の議論とあまり関係のない発言が出た場合は、その意見に引っ張られるとさらに議論が方向性を見失ってしまいます。発言そのものはしっかり受け止めた上で、「これについては後で議論しましょう」 と言う程度にとどめ、ホワイト ボードの角にスペースを作っておき、そうした発言を書き留めておくと言う方法もあります。

意見のレベルが合っていない場合

抽象的な戦略について話をしているときに具体策の発言が出てきたり、あるいはその逆のパターンもあります。議論がかなり深まってきたときに、「そもそも論」を発言する人もいます。こうした発言があった場合は、 無視をする事はできませんが、議論のやり直しにつながったり、 タイムキーピングが難しくなる可能性もあります。例えば「今は大枠の方向性について話をしていましたが、先程の意見はかなり具体的な内容ですね。 今具体策について発言されたのは、何か理由があってのことですか?」 といったように、その発言の意図を確認しながら受け止めていく必要があります。

6. 参加者同士の対立を調整する

真剣に議論をすればするほど、意見の対立が発生する事はあります。この意見の対立は、潜在的な問題をあぶり出し、より生産的・創造的な結論を出すために役に立つ場合もあります。しかし対応を誤ると、意見がまとまらなかったり、 議論の分裂につながってしまう恐れもあるので丁寧に対応する必要があります。 対立をより良い議論に生かすために、ファシリテーターは以下の 3点を心がける必要があります。

合意できる点と合意できない点を区別する

意見の対立が発生したら、まずはどの部分で意見が対立しているのかを明確にする必要があります。対立点が明確になれば、その原因把握がしやすくなりますし、発言者も 必要以上に感情的にならずに、客観的に意見を考えることができます。

対立の原因を明確にする

対立の原因としてよく見られるのは、参加者の立場とその文脈です。参加者は立場によって重視すべき点が異なり、それが対立につながる場合があります。ファシリテーターは 公平な立場で、お互いの立場の違いを理解させて、より高い視点で結論を出すように働きかける必要があります。

また文脈の違いと言うのは、例えば発言者のそれまでのキャリアや経験、 プロジェクトに関与する経緯などです。 今まで営業一筋の人と事務一筋の人が同じ議論に関われば、見え方や感じ方が異なっても不思議ではありません。 そうした参加者の文脈を理解した上で、両者の橋渡しをしていくこともファシリテーターの役割です。

視点を変える

意見の対立が複雑に絡みあったり、参加者同士が感情的になってしまっている場合は、対立が起きている テーマに対しての視点を変えることが有効な場合があります。例えば営業戦略について意見対立が起きているのであれば、1段階高い視点(例えば経営戦略)の視点からその対立を評価してみてはどうでしょうか。 あるいは営業戦略の対立を、マーケティングの観点から見直してみるなど、視点を横に広げることも有効です。

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